研究概要 |
植物の病害抵抗性反応の時間的・空間的制御メカニズムの解明を目指して,シロイヌナズナに植物病原細菌Pseudomonas syringae pv. tomato (Pst) strain DC3000を感染させた際に誘導される防御発現系をモデルとして感染細胞の動態を観察した. 非病原性のPst DC3000/avrRpm1の感染を受けた植物細胞を電子顕微鏡で観察した結果,病原細菌を接種してから3時間後の細胞で細胞膜と液胞膜が融合することを見出した.この膜融合をリアルタイムでモニターするために,細胞膜に局在するPIP2a蛋白質にGFPを繋げ,液胞膜に局在するVam3蛋白質にmRFPを繋げた二重形質転換体を作出した.この植物体を蛍光顕微鏡で観察することにより,細胞膜と液胞膜を異なる蛍光で可視化することに成功した.この植物体にPst DC3000/avrRpm1を感染させたのち,二種類の蛍光の挙動を観察した.その結果,感染後3時間目の細胞において,GFPとmRFPの蛍光が重なり,細胞膜と液胞膜が融合することを生きた細胞で観察することができた.このような膜融合は,Pst DC3000/avrRpt2を感染させた細胞においても観察され,感染細胞に共通の現象であることが示唆された.また,病原性のPst DC3000を接種した場合は,このような膜融合はまったく観察されず,膜融合は非病原性の感染に特異的な現象であることが分かった.現在,感染によって誘導される膜融合の生物学的意義について解析を進めている.
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