植物と病原微生物との相互作用において重要な役割を担う遺伝子がモデル植物を中心に分子生物学的手法により単離され、発現制御機構についても多くの知見が得られている。これらの知見は、主として変異体解析により明らかとされてきたものであり、病害抵抗性反応の各ステージでの各遺伝子の機能は正確には解明されていない。これらの機能解析には、各遺伝子の発現やその機能を個体、細胞レベルで"生きたまま"可視化するバイオイメージングの技術がひとつの有効な研究手法となりうる。本研究では、植物の細胞から個体レベルでのバイオイメージング法を確立し、植物の耐病性機構に関わる分子の動態を時空間的に理解することを目指した。 植物病原微生物の感染にともなう細胞内膜系の動態解析 植物病原微生物の感染にともなう細胞内膜系の動態を共焦点レーザー顕微鏡を用いてリアルタイムにイメージング解析を行った。液胞膜に局在するVam3タンパク質と細胞膜に局在するPIP2aタンパク質にそれぞれRFPおよびGFPを繋げることで、液胞膜と細胞膜を異なる蛍光で可視化し、感染細胞における膜の動態を時間的、空間的なパターンで解析した。 植物感染細胞内Ca^<2+>濃度のリアルタイム計測 「発光観察」は、励起光を必要とする「蛍光観察」とは異なり、自家蛍光が多くまた光毒性の影響が出やすい植物個体内部のイメージングに適している。生物発光タンパク質から蛍光タンパク質への生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)を利用したカルシウム指示薬(BRAC)の開発に寄与し、シロイヌナズナ感染細胞内のCa^<2+>濃度のリアルタイム計測に成功した。
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