左右非対称に器官形成を行う外生殖器の回転運動という、器官形成過程で詳細な記載の難しい制御メカニズムにどのようにして迫るのかが重要なポイントであると考えられる。我々はすでに、雄性外生殖器の正常な形成過程を単一細胞の動きのレベルでイメージングすることに成功している。単一細胞レベルのイメージングには核移行シグナルを付与した蛍光タンパク質を用いた。このイメージングから、360度の正常回転の際に外生殖器を取り囲む細胞集団であるA8体節細胞において、発生の決まったタイミングで時計回りに一部の細胞集団が移動を開始し、一定のスピードで回転運動を行ったのちに、ちょうど12時間後に360度の回転を終えて停止することが明らかになった。 さらに詳細な解析を行った結果、外生殖器の周りを取り囲む細胞が、集団で同一方向に移動していることで回転を制御している様子が観察された。一方、移動している細胞のさらに周囲を取り囲む細胞層では、細胞の移動は観られず、一部の細胞が死んでいることが明らかとなった。この細胞死を抑制することで回転異常を示すことから、外生殖器の器官形成における細胞移動と細胞死の相関が示唆された。細胞死の回転への寄与を定量化するために、正常な個体と細胞死を抑制した個体で回転のスピードを比較したところ、正常な個体において観られる回転速度の上昇が、細胞死を抑制した個体では観察されず、一定の速度で回転して正常な個体と同じ時間経過で停止してしまった。この結果から、細胞死は発生の一定時間内に外生殖器の形態形成を完了するために重要な役割を持つことが示唆された(投稿中)。
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