UV励起蛍光タンパク質のX線結晶構造解析 1.蛋白質の結晶化と回折測定 アミノ酸置換変異導入により段階的に蛍光強度を増強させたUV励起蛍光タンパク質変異体の結晶化を行った。構造決定を予定した蛍光強度の異なる7つの変異体のうち全てにおいて回折測定に十分な大きさの結晶を得ることができた。それらについて、北海道大学薬学研究科の稲垣教授の研究室と共同で研究室内のX線発生装置や国内の放射光施設で回折測定を行ったところ、5つのサンプルについて構造決定に十分な分解能2A付近かそれ以下の良好な反射データを得ることができた。当初の予定に反して、反射の得られたサンプルの結晶化条件はそれぞれ異なり個々に条件のスクリーニングを必要とした。残りの2サンプルに関しては引き続き結晶化条件のスクリーニングを行っている。 2.測定データの解析 良好な反射の得られた5つのサンプルについて解析を行っている。そのうち蛍光量子収率の最も大きい最終改良変異体である"Sirius"とその1段階前の改良変異体については構造精密化を終えprotein data bankに立体構造座標データを登録する予定である。また、残りの3つのサンプルに関しても蛍光発色団以外の主鎖・側鎖原子に関する構造モデルの構築を終えた。引き続き電子密度に発色団の原子と水分子の構造モデル構築を行っている。モデル構築中の蛍光量子収率の最も低いUV励起蛍光タンパク質の立体構造と最終改良変異体"Sirius"の立体構造を比較すると予想通り、クロモホア近傍に変異導入されたアミノ酸残基により蛋白質内部の空間が充填されており、発色団の付近の構造の揺らぎが小さくなっていることが予想される。
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