研究概要 |
本年度は,複合体構造解析で解明を目指す電子伝達分配システムの内,主にクロロフィル合成の鍵酵素であるフェレドキシン依存性の暗所作動型プロトクロロフィリド還元酵素(DPOR)に的を絞って構造研究を遂行した。その結果,クロロフィル合成酵素群として初めてその立体構造を解明することができた。DPORの触媒コンポーネントの立体構造は、BchNとBchBという2つのサブユニットからなるヘテロ四量体構造をとり、相同酵素であるニトロゲナーゼと全体配置は類似していた。しかし、活性中心やBchBサブユニットのC末端部分に大きな構造の違いがみられた。特に注目すべきは、FeSクラスターの構造で、今回初めてAspを配位子に持つサブユニット間に存在するFeSクラスターを同定するに至った。また、プロトクロロフィリドのD環をtrans特異的に還元する反応機構を、基質と酵素の相互作用部位や、基質アナログによる阻害実験から明らかにし、植物生理学的に重要なプロトクロロフィリド還元反応(緑化反応)の構造基盤を世界で初めて提唱することができた。 並行して、フェレドキシンへ還元電子を伝達する光化学系I反応中心とフェレドキシンとの相互作用解析も行なった。^<15>Nラベルしたフェレドキシンを調整し、NMRを用いて光化学系I反応中心との予備的相互作用実験を行ない、良好なケミカルシフトの変化を観測することができた。今後は、NMRでの相互作用実験の結果をベースに複合体結晶化を精力的に進めていく。
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