現在、細胞機能の制御方法として、トランスジェニックやノックアウトをはじめとした遺伝子工学技術や薬剤添加による方法などが行われている。遺伝子や薬剤を利用した従来の方法に頼らず、再生医療に有望な幹細胞などが有する機能を非侵襲的に制御することは疾病の治療・予防にとどまらず、基礎生物医学実験などにも有用なツールとなる。そこで、安全に細胞機能を制御する方法として光技術を応用することが本研究の目的である。これまでの結果として、骨髄から採取した間葉系幹細胞に405nmのGaN系レーザー光を照射することにより、幹細胞が骨芽細胞または軟骨細胞に分化促進し、脂肪細胞への分化が抑制される現象を発見している。そのメカニズムとして、細胞内の光受容体や体内時計関連遺伝子の解析を行っている。本研究期間内では、動脈硬化部位における泡沫化マクロファージの炎症性サイトカイン分泌、膵β細胞からのインスリン分泌や肥満細胞からのヒスタミン遊離を光技術により制御することを目的としているが、特に本年度は上述の幹細胞分化メカニズムに関する研究および肥満細胞からのヒスタミン遊離を光技術により制御する研究を行った。さらに本年度は光線力学療法(Photodynamic Therapy)後の免疫応答にも着目し、光技術を用いた癌治療についても研究を行っている。現在、得られた結果の一部をまとめて論文投稿中であり、研究開始当初に立案した研究計画よりも速いスピードで効率的な研究を行っている。
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