研究課題/領域番号 |
21687020
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
中鉢 淳 豊橋技術科学大学, エレクトロニクス先端融合研究所, 准教授 (40332267)
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キーワード | キジラミ / bacteriome / カルソネラ / 二次共生細菌 / トランスクリプトーム / RNA-Seq / ゲノム解析 / 新規生理活性物質 |
研究概要 |
本年度は、前年度に塩基配列を決定した北米産キジラミPachypsyla venustおよび日本産ミカンキジラミDiaphorina citriの合計8種類のcDNAライブラリーに基づくESTデータを用いて、配列類似性解析、分子系統解析をはじめとする情報学的解析を行い、各ライブラリーにおける転写産物ポピュレーションの分析を進めた。これにより、キジラミ両種の共生器官bacteriomeにおける特異な遺伝子発現プロファイルを見出すと同時に、宿主昆虫ゲノムが共生細菌などから水平転移により獲得した遺伝子群の候補を抽出することに成功した。 これら一連のトランスクリプトーム解析に加え、平成21・22年度にはD. citriの一次共生細菌カルソネラおよび未記載の二次共生細菌のゲノム解析を遂行したが、この際、二次共生細菌が生理活性物質の合成能を持つとの示唆を得た。これに基づき、本年度は、各種生化学解析や構造解析、生理活性検定などを行うことで、実際にミカンキジラミ二次共生細菌が、顕著な生理活性を示す新規物質を合成していることを発見した。今回決定した、その化学構造と生理活性から、医薬開発への応用展開が大いに期待できる。 また、本年度は、年度途中に大学教員としての職を得、自らの研究室を立ち上げることで、ミカンキジラミの飼育系を確立するとともに、本研究計画の情報学的解析後の主要要素を占める分子生物学的解析(定量的RT-PCR、サザンプロット解析、免疫化学的解析、RNA干渉法による遺伝子ノックダウン等)を遂行する体制を整えた。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
D. citri共生細菌2種の全ゲノム塩基配列の決定と、それに基づく新規生理活性物質の発見は、きわめて大きな成果と言えるが、トランスクリプトーム解析における情報学的解析後の分子生物学的解析に遅れがある。その主な理由は、本年度の研究代表者の理化学研究所から豊橋技術科学大学への移籍に伴い、実験遂行が困難な期間が数ヶ月にわたって生じたことによる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は新規研究室を立ち上げ、設備面等での研究体制の基盤固めに努めたが、来年度は、学生を複数受入れるとともに、技術補佐員を雇用し、高い効率を持って計画を遂行する。これにより、当初より掲げている本研究の目標を、着実に達成する。すなわち、カルソネラの生存を支えるために果たす宿主細胞の役割、宿主・カルソネラ・および二次共生細菌の間の相互作用を解明するとともに、カルソネラゲノムから宿主ゲノムへの遺伝子水平転移の可能性や、ミトコンドリアタンパク質のdual targetingの可能性について検証することで、細菌がオルガネラへと進化するための要件を理解することをめざす。
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