研究課題
半翅目昆虫キジラミ類の「菌細胞」にすみ、垂直感染のみによって2億年にわたり受けつがれてきた共生細菌Carsonella ruddii(以下カルソネラ)は、葉緑体ゲノムと同程度にまで縮小した極小ゲノム(160kb)をもつ。このゲノムには、原核生物に特異的なプロセスにかかわるものも含め、生命維持に必須とされる遺伝子の多くが存在しない。ではこの極小ゲノムをもつオルガネラ様細菌の生存を支えるために、宿主菌細胞はどのような遺伝子を発現し、宿主-カルソネラ間にはどのような相互作用が存在するのか?また、キジラミには、カルソネラに加えて「二次共生細菌」を保有する種も多いが、この場合の三者間関係についてはどうか?こうした問題の解明を目指し、カルソネラのみを持つ北米産キジラミPachypsylla venustaと、二次共生細菌を共存させるミカンキジラミDiaphorina citriの菌細胞塊、および虫体全体から8種類のcDNAライブラリーを作製し、次世代シーケンサーGenome Sequencer FLXシステム(Roche社)を用いたトランスクリプトーム解析を行った。得られた転写産物ポピュレーションの比較解析により、P. venustaとD. citriのいずれの菌細胞においても特異的に高発現していると見られる遺伝子群や、両種間で異なる発現傾向を示す遺伝子群を見出すことに成功した。これらの発現について定量的RT-PCRなどで検証を進めるとともに、RNA干渉法による発現抑制を試み、有望な結果を得た。また、ミカンキジラミの共生細菌2種のゲノム解析も行い、カルソネラのゲノム進化について重要な知見を得るとともに、二次共生細菌がこれまでの常識を覆す全く新たなタイプの共生細菌であることを見出した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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