研究概要 |
本研究では航空機リモートセンシング観測データから樹冠の表面温度を抽出した結果と,熱環境シミュレーターを用いて樹冠周辺の熱環境を再現した結果を併用することで都市の気温分布図を作成すること,さらに得られた気温分布図を用いて都市緑地のヒートアイランド緩和機能を評価することを計画している。本年度は,前年度に航空機リモートセンシング観測を行った地域について樹冠分布図を作成し,リモートセンシングデータ(熱赤外データ)を用いて樹冠の表面温度分布図を作成した。また,解析対象域を設定した上で設定した対象域について,空間形状,材料情報を含む3D-CADモデルを試作した。作成したモデルを用いて熱収支シミュレーターにより全表面温度分布を試算し,今後必要な情報の確認を行った。また,今年度はリモートセンシングデータから得られる気温分布図との比較分析用に,分析対象地区の生物季節を調査して解析した。具体的には,都市的環境から農的・自然的環境まで比較可能である郊外都市において,ソメイヨシノの開花日と周辺土地被覆の関係を調査した。その結果,市街地では郊外部に比べて開花日のばらつきが大きく,開花日の早い地点が現れ得ることが示された。都市内における開花日と土地被覆の関係性の分析結果からは,5つに分類した土地被覆はそれぞれに開花への影響に差異が見られることが確認された.また,樹木から半径50m程の範囲内の土地被覆の違いが,市街地とその近郊地域の開花日の差に最も影響している可能性が示唆された。さらに,地域間の開花日と土地被覆の関係性の比較からは,地域間に生じた開花日の差は,沿岸部か内陸部かといった,より広域的な環境の違いが反映されていることが推察された。
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