リモートセンシングデータ(熱赤外データ)から抽出された樹冠の表面温度と,熱収支シミュレーターを用いた計算から得られた樹冠周辺の放射環境特性の情報から,市街地における気温分布図を作成した。その際,作成された気温分布図と,作成の元になった二つの情報の検討から,建築物からの放射による影響が大きい場所などの,気温推定を行う上で特に検討が必要な空間の特定を行った。また手法の一般化に向けてそのような空間の特性を整理して取りまとめた。さらに,これまでに得られた知見を踏まえて,大都市市街地における気温分布図の作成方法の一般化を行い,データ取得方法,データ解析方法,地図作成方法を取りまとめた。 次に,得られた気温分布図からヒートアイランド発生状況とその特徴を分析するとともに,小河川,大規模公園緑地,斜面緑地,市街地内小規模緑地周辺の気温分布の特性を分析し,緑地のヒートアイランド緩和効果を評価した。その結果,地形の影響や風速の影響を受けることで,ヒートアイランド緩和効果が市街地に及ぶ範囲に違いが生じている状況を把握することが可能となった。さらに,市街地内の緑被率とヒートアイランド緩和の関係について分析した結果,高層建物が隣立する大都市中心部では緑被率の上昇がヒートアイランド緩和には直結しないことが示された。また一方で,緑地の管理実験を実施することで,緑被の適切な管理により周辺地域へのヒートアイランド緩和機能を増大させることが可能であることを示した。
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