本研究の目的は、花弁肥大成長の仕組みを明らかにし、つぼみからの花弁の成長つまり開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を人為的にコントロールすることを目標としている。平成22年度は、シロイヌナズナ変異体を用いたエクスパンシンおよびエンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)遺伝子の発現解析を行い、モデル植物における開花と細胞壁関連酵素遺伝子との関係を調べた。しかし、前年に引き続きシロイヌナズナ変異体の形質の安定化に時間がかかっており、23年度も解析を続ける予定とした。また、大腸菌により発現させた細胞壁関連酵素(エクスパンシンおよびXTH)のリコンビナントタンパク質を抗原として、それぞれの酵素に対する抗体を作製した。その抗体を用いて、エクスパンシンおよびXTHのバラ切り花でのタンパク質量の変動、ならびにバラ切り花への抗体処理の影響を調査した。バラ切りバラへの抗体吸収実験は、切り花の切り口から処理することで、確実に花弁組織に到達することが確認でき、現在花弁成長への影響を繰り返し調査中である。一方、XTH活性に対する阻害剤としてXG9という糖を見出し、切り花に処理することで開花に対する阻害効果を調べた。その結果、XG9が花弁の成長を濃度依存的に阻害している事を明らかとし、その阻害メカニズムについて重要な知見を得ることができた。
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