本研究の目的は、花弁肥大成長の仕組みを明らかにし、つぼみからの花弁の成長つまり開花現象を解明することにある。さらにそのメカニズムを制御し、切り花などのつぼみから開花に至る過程を人為的にコントロールすることを目標としている。平成23年度は、まず昨年度までからの課題であったシロイヌナズナ変異体の発現形質の安定化を、T-DNA挿入遺伝子のホモ化を行うことで解決した。このホモ化したシロイヌナズナ変異体を用いてエクスパンシンおよびエンド型キシログルカン転移酵素/加水分解酵素(XTH)遺伝子の発現解析を行い、モデル植物における開花速度と細胞壁関連酵素遺伝子との関係を調べた。また、XTH活性に対する阻害剤であるXG9という糖の効果について、様々な品種のバラを用いて詳細に検証した。その結果、比較的高濃度のXG9を切り花に処理すると花弁の成長を促進し、低濃度で処理すると逆に開花を阻害することが分かった。この結果は、エンドウの実生を用いた実験報告と一致しており、バラ花弁の開花にともなう肥大成長も、エンドウ胚軸の伸長成長同様、外生的に与えたXG9により制御可能であることを示唆するものである。さらに、本研究を通し、バラ切り花がつぼみから開花する際、一日のうちでも明期が始まった数時間しか花弁の成長が起こらず、それ以外の時間帯はほとんど成長していないことが明らかとなった。この成長リズムはこれまで研究を進めてきた細胞壁関連酵素の発現及び活性制御機構では解釈が困難であり、アクアポリンの制御などと言った細胞壁関連酵素以外の因子によって開花リズムがコントロールされている可能性が示唆された。これらの課題は、今後別の研究課題を立ち上げることで研究を継続して行く予定である。
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