研究概要 |
ホウ素は植物の必須栄養素であると同時に、過剰条件では毒ともなる元素であり,その土壌からの吸収と植物体内での移行は厳密に制御されている。本研究の目的は,植物細胞がホウ素濃度を感知し,ホウ素輸送体BOR1の蓄積量を制御し、ひいてはホウ素の吸収と移行を制御する機構を解明することである。 本年度は、ホウ素輸送体BOR1が高ホウ素濃度に応答して分解される過程に重要なBOR1のアミノ酸配列を同定した。本成果は、ホウ素輸送体NIP5;1とBOR1の極性を持った細胞内局在とそのメカニズムの解析結果と合わせ、Proc.Natl.Acad.Sci.USA誌に発表した。 続いて、ホウ素濃度センサー候補と考えられるCell wall-associated kinase(WAK)について逆遺伝学的解析を開始した。シロイヌナズナゲノムにコードされる25個のWAK様遺伝子のほとんどについて、Knock-outが期待できる変異株を整備した。これら変異株におけるBOR1の蓄積パターンには野生型と明確な差はみられなかったが、ホウ素過剰条件にやや感受性が高い変異株を2系統見いだした。したがって、これら2系統の変異株において欠損している2つのWAK様タンパク質が、ホウ素応答に関与している可能性が示唆された。また、BOR1をユビキチン化するユビキチンリガーゼ候補遺伝子をデータベースや文献情報に基づき選んだ。これらについても、Knock-outが期待できる変異株を整備した。
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