研究課題
土壌呼吸(土壌からのCO2放出)は大気中のCO2濃度の10%を占め、その大部分が森林土壌中の生物活動に由来する。ボルネオ島の熱帯多雨林で発見された土壌呼吸のホットスポット現象(土壌呼吸の大量発生)は炭素循環における土壌動物の重要性を示唆している。そこで本研究は、1)アジア熱帯林における土壌呼吸のホットスポットの重要性、2)ホットスポットの発生メカニズム、3)土壌呼吸の生成過程における土壌動物の役割、を解明することを目的とした。本年度は、昨年に引き続きタイの熱帯季節林(サケラート環境研究センター)において、土壌呼吸のライン調査とコロニー調査を行い、ホットスポットの発生頻度、発生原因に加えて、土壌呼吸の変動要因について調査を行った。その結果、土壌呼吸の空間分布は、乾期と雨季で異なり、温度や含水率との関係が二つの季節および各季節の前半と後半で異なることが示された。またホットスポットの発生位置とシロアリ塚の位置を地図化したところ、ホットスポットの発生位置の近くにには高い確率でアリ塚が存在することが分かった。また、本年度はマレーシアの熱帯多雨林(ランビルヒルズ国立公園)でも同様の手法を用いたライン調査とコロニー調査を実施した。その結果、土壌呼吸の高い地点では土壌中にアリやシロアリが存在すること、アリの巣からのCO2放出量は、周辺の土壌呼吸量よりも高いことが明らかとなった。今後は採集したデータをさらに解析し、論文としてまとめることで炭素循環における土壌昆虫の役割ををアジア広域で評価する。
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