22年度には、アメリカに引き続き、EUでも木材の産地表示を義務化することが決定され、世界中で木材の産地・樹種表示を義務化する動きが広がっている。 違法伐採抑止のための産地判別技術には、産地判別誤差・誤判定の可能性が小さいことが必要不可欠である。食品の産地偽装対策技術として、安定同位体分析が用いられているが、1年生の農産物の産地判別と違い、木材では年輪の同位体比時系列作成により多数の安定同位体比データを複数年にわたって比較することができるので、高精度(誤差60-300km)で産地判別することが可能である。しかしながら、多数のデータを測定するには、時間・コストがかかりすぎる問題があり、これが実用化の障壁となっていた。 そこで、今年度は同位体分析法の効率化を行った。従来は、樹幹の半径方向に切った厚さ0.5-1mm程度の木口薄片を作成し、この薄片から年輪を一年毎に切り分けたあとバイアルに入れ、年輪別にαセルロース抽出を行っていた。今回、名古屋大学の中塚教授とともに新たに開発した方法は、薄片をテフロンの容器に入れ保持しながら薬品処理を行うことにより、薄片全体を崩壊させることなしに、木口薄片全体をセルロースにする方法であり、数百年輪を一度にセルロース抽出処理することができるので、作業効率が大幅に向上した。 また、別予算で導入した高温熱分解型元素分析計(Hekatech HTO)をセットアップし、誤差0.3パーミルでの酸素同位体比が行える分析システムを立ち上げたので、酸素同位体比分析を用いた木材産地判別研究がさらに進展することが期待できる。
|