本研究では、明期条件下において光合成を行っている葉の周辺空気を瞬間的に減圧(減圧処理)し、これに対するクロロフィル蛍光強度の応答を解析することで光合成機能の定量評価を試みた。具体的には、内容積100mlの透明アクリル製チャンバに葉を圧着固定し、青色LED光源からの光照射により励起されたクロロフィル蛍光をCCDカメラで撮像(13fps)した。光合成速度、蒸散速度、チャンバ内気圧も同時に記録した。減圧パルス(0.3秒以内に101.3kPaから50.7kPaに減圧、その後10秒間49kPa以下を維持)は、三方向電磁弁によりチャンバ内を密閉した直後に逆止弁付きの気体採取器を用いてチャンバ内空気を手動で引き抜くことでこれを行った。クロロフィル蛍光強度は、減圧パルス開始とほぼ同時に上昇し、約3秒後に最大となり、その後次第に低下した。なお、減圧処理後のクロロフィル蛍光強度の上昇幅を"Peak height"と定義した。この間、熱放散経路は活性化されておらず、また、減圧パルス前後で光合成速度と蒸散速度に変化は認められなかった。明期条件下にて二酸化炭素濃度を変化させながら、減圧パルス-クロロフィル蛍光計測を行った結果、光合成速度とPeak heightの間に強い相関があることが分かった。この結果は、減圧パルス-クロロフィル蛍光計測法により光合成速度を簡便に測定できる可能性を示唆していた。なお、当初、本計測法により内部コンダクタンス計測を試みたが、減圧処理への蛍光強度の応答速度が0.05秒以下であったため、内部コンダクタンスの測定は困難であると結論付けた。
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