平成25年度では本年度の研究計画の(1)“核移植後の初期化促進の検討”は行わなかったが、(2)“凍結乾燥させた組織からのクローンの試み”を行った。現在までにOno ら(J Reprod Dev. 2008)により、凍結乾燥した体細胞の核移植を試み、核移植ES細胞を樹立し、それを核移植し、クローン個体を得た報告がある。この場合、凍結乾燥する試料は培養細胞の状態であるため、乾燥する前に事前に細胞培養の準備を行わなければならない。今回研究代表者は直接体組織を採取し培養することなくそのまま乾燥する方法を行った。使用したサンプルはBDF1マウスの筋肉、肝臓、卵子(卵丘組織付きMII)を用いた。乾燥方法は凍結乾燥機による方法と、スライドにグラスに組織片を貼り付けデシケータ内で乾燥させる方法を用いた。いずれも乾燥後水和を行い、細胞を単離したのち核移植に用いた。しかし、どの方法でも細胞自体が固く固まり核移植が大変困難であったため、できた核移植胚の数が少なく、さらに前核形成は数個しか確認することができなかった。 また、本年の計画にないが、絶滅危機動物の場合、動物自体を確認できなくても野生で生活痕(糞尿)が見つかる場合が多い。そこで、糞の表面に付着する腸壁細胞からクローンができないものだろうかというアイデアのもとに実験を進めてみた。まずGFPの入ったTgマウスの糞を採取する。培地中で糞を粉砕、フィルター濾過、遠心でグリーンの蛍光をもつ細胞を採取した。採取した細胞は2回PBSで洗浄のち核移植に供した。核移植胚のうち数十%は前核を生じたが2細胞期まで発生することはなかった。本実験では良好な発生を示した核移植胚は得られなかったが、絶滅危惧動物をクローン動物として増やす有効な手段となりえることから、本研究費が終了したのちにも、糞だけでなく尿の中からも細胞を採取し、核移植を試みてみる予定である。
|