研究課題
不溶性基質を分解する酵素は一般的に固体基質に吸着するドメインと、加水分解などの触媒反応を司るドメインから構成されていることが知られている。すなわち、固液界面における酵素反応は、まず固体の基質に酵素が吸着することからスタートし、酵素に対してアクセシブルな表面から反応が進んでいくと考えられている。そこで本研究では、高速原子間力顕微鏡(High-Speed Atomic Force Microscopy : HS-AFM)を用いて、セルロースを加水分解するセルラーゼの無標識一分子観察を行い、生化学的実験結果と照らし合わせることで、セルラーゼによるセルロース分解機構の解明を目指した。本年度は、Trichoderma菌由来Cel7Aの活性中心内部のトリプトファン残基W40、W38、W367、およびW376をそれぞれアラニンに置換した変異体(W40A、W38A、W367A、W376A)に対し、一分子観察を金沢大学に設置されている高速原子間力顕微鏡によって高解像度に観察することを試みた。その結果全ての変異酵素において野生型と比較して顕著な活性減少が観察された。また、高速原子間力顕微鏡による観察ではW40AおよびW38A変異体では基質を取り込むことができない様子が観察されたのに対して、W367とW376Aでは酵素分子が基質表面で動けない様子が観察された。以上の結果は、セルロース系バイオマスを糖化するための鍵酵素であるTrichoderma菌由来Cel7Aによるセルロース分解機構を明らかにするために大変重要な手がかりとなることから、現在投稿準備中である。さらに、担子菌エノキタケからTrichoderma菌由来Cel7Aと同じ糖質加水分解酵素ファミリー7に属するタンパク質の取得に成功し、その生化学的キャラクタライズを行うとともに、以下11に記載したとおり発表を行った。
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木材学会誌
巻: 56 ページ: 397-404
Plant Biotechnology
巻: 27 ページ: 273-281