ケモカインレセプターCCR5阻害剤創成を目指して環状デプシペプチドcallipeltin類の全合成と類縁体合成を中心に研究を行った。特に環状デプシペプチドの合成と異常アミノ酸dimethylgulutamineの立体制御合成に傾注した。環状デプシペプチドの合成ではC末端からN末端に向かう直鎖状のペプチドを合成し、N末端とC末端、すなわちデプシ部分での環状化反応を詳細に検討した。その結果、N末端アミノ酸の構造に起因する環状化の効率性について大きな知見を得ることができた。結果としてcallipeltin Bの合成には不向きであるという結論に達したが、今後のcallipletin A類の合成には適用可能である。これらの知見をもとに様々なアミノ酸を組み込んだ環状ペプチドライブラリーの合成を行ったところ、C末端アミノ酸がN-メチルアミノ酸の時に重大な問題点が生じることがわかった。詳細は次年度に精査することとなった。 異常アミノ酸dimethylglutamineの立体制御合成では出発原料にセリンを用い、各種保護基を導入後Hanessian法による完全立体制御による2つにメチル基の導入に成功した。その後、ラクトン体へ変換し、天然物の立体構造にするために立体反転を行い、ラクトンからラクタムへのone pot変換に成功した。最後にTEMPO酸化によって選択的に1級アルコールのみをカルボン酸に変換し、その合成を達成した。本合成は工程数が長く大量供給という面で難点があるため、更なる改良が必要であると思われた。 本年度は計画通りに進捗することができず、いくつかの課題が残り、次年度に向けて更なるスピードアップが必要である。しかし進捗が遅いのみで計画の変更はない。細胞を用いたアッセイにも取り組んで行く予定である。
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