ケモカインレセプターCCR5阻害剤創成を目指して環状デプシペプチドcallipeltin 類の全合成と類縁体合成を中心に研究を行った。環状デプシペプチド合成法の開発では、デプシ結合での環化は困難を極めた。そこで環化位置の検討を行い、ジケトピペラジン形成を抑制した最適条件を見出すことができた。またD-allothreonineの供給に問題があったため、再検討を行った。既知法では再現性が乏しかったため、詳細な条件検討を行うことで、再現性の高い、大量合成に耐えうる条件を見出すに至った。さらに、直鎖callipeltin Mの最初の全合成にも成功し、副反応で生成するペプチドの構造決定、メカニズムの解明もあわせて行うことができた。 一方で細胞毒性試験を行うためにHela細胞を用いて細胞培養、継代、保存、アッセイ法の確立を行った。Callipletin 類は細胞毒性を有するため、CCR5/HEK293を用いたアッセイが難しい。そこで細胞毒性を軽減したcallipeltin類の構造活性相関を行った。Hela細胞は理研細胞バンクから入手し、DMEM/10%FBS/1%PEST培地を用い、培養、継代を行った。対数増殖期にある細胞を5000個ずつ撒き、24時間培養後、様々な濃度に調製したcallipeltin類を加え、さらに24時間培養した。WST-8を用いたMTTアッセイによって生細胞を評価することで細胞毒性試験とした。その結果、ジメチルピログルタミン酸のジメチル基が活性に大きな影響を与えていることがわかった。それ以外の異常アミノ酸、D-アミノ酸などへの置換は活性に大きな違いを与えなかった。デプシ部をアミド結合へ交換、環のサイズを変化させても同様であった。毒性を軽減させた阻害剤創製へ向けて大きな知見を得ることができた。
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