研究概要 |
昨今のペプチド・蛋白質・核酸医薬品等の難吸収性医薬品シーズの増大、患者の生活の質(QOL)および高齢化に伴う嚥下困難な患者の増加を考慮すると、消化酵素による分解を回避でき、非侵襲性であり、投与および投与の中断が容易な『経皮投与』が理想的な投与方法であることは言うまでも無い。しかしながら、元来皮膚は外部環境から生体内部環境を保護するバリアとして機能しており、一部を除き皮膚バリアを効率よく透過しうる薬物は少なく、ここに経皮投与薬創製の難しさがある。現在までに、皮膚の重層上皮細胞層にclaudin-1、-4、occludinが発現していることが詳らかにされた(Furuse et al., 2002; Furuse, 2009)。このことは、これらの皮膚バリア制御分子のmodulatorが経皮投与基盤技術になることを示唆している。本研究では、独自の生体バリア制御研究の成果を有効活用し、皮膚バリア制御分子を創製し、『貼る薬、経皮投与の実用化』に資する基盤技術の開発を目指す。 本研究の成否は、ファージライブラリの質とリガンド分子スクリーニング系の質が握っている。平成22年度までに、各種scFvライブラリ・各種C-CPEライブラリ・各種ペプチドライブラリ等を作製、皮膚バリア制御分子スクリーニング系を構築し、claudin binderの取得を試みてきた。平成23年度は、新規claudin binderについて、本分子の上皮バリア制御活性を解析し、C-CPEに比して優れた制御特性を有することを見出した。
|