研究概要 |
本研究課題は、脂肪組織由来ホルモンのレプチンとアディポネクチンによる自律神経調節メカニズムについて、脳内分子と作用経路の解明に着目し、抗メタボリックシンドローム作用を持つ新規治療戦略への貢献を目指すものである。これまで研究代表者が確立した電気生理学手法により、麻酔下ラットの自律神経活動を計測する方法を主に使用した。本年度、ウレタン麻酔下の自律神経作用をもつペプチドとして、Neuropeptide-Y(NPY)やNeuromedin U(NMU)の効果を報告してきた(Tanida et al., 2009, Physiology & Behavior, Neuropeptide)。同様に、レプチンの脳室内投与は、交感神経腎臓枝、副腎枝、褐色脂肪枝、肝臓枝、脾臓枝、胃枝の興奮を引き起こし、副交感神経胃枝の活動を抑制した。さらに、これらの脳内分子メカニズムを検討する目的で、AMPキナーゼの役割を検討した。具体的には、AMPキナーゼinhibitorであるCompound-Cと促進薬であるAICARの投与効果を検討した。その結果、Compound-Cまたは、AICARの事前脳室内投与は、レプチンによる腎臓交感神経促進作用と胃副交感神経抑制作用を消失させた。現在、siRNAを用いて、AMPキナーゼノックダウンラットの作製を行っている。作製後に、レプチンによる自律神経及び摂食作用を検討する予定である。また現在、研究代表者は神経核への微量注入のための実験条件を検討している.この確立後に、レプチンまたはアディポネクチンによる自律神経作用の調節部位を検討する目的で、視床下部の神経核への微量注入法を用いて実験を行っていく予定である。
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