研究概要 |
本研究課題は、脂肪組織由来ホルモンのレプチンとアディポネクチンによる自律神経調節メカニズムについて、脳内分子と作用経路の解明に着目し、抗メタボリックシンドローム作用を持つ新規治療戦略への貢献を目指すものである。本年度、自律神経作用性物質であるアンセリンやPACAPの中枢投与効果をウレタン麻酔下ラットで検討した結果、アンセリンでは中枢のヒスタミン神経を介して腎臓交感神経を調節する経路を発見し(Tanida et al., Physiological Research, 2010)、PACAPでは中枢のメラノコルチン系を介して交感神経を調節する経路を新たに見出した(Tanida et al., Regulatory peptides, 2010)。またレプチンの脳室内投与は、交感神経腎臓枝、副腎枝、褐色脂肪枝、肝臓枝、脾臓枝、胃枝の興奮を引き起こし、副交感神経胃枝の活動を抑制した。さらに、これらの脳内分子メカニズムを検討する目的で、AMPキナーゼの役割を検討した。具体的には、AMPキナーゼinhibitorであるCompound-Cと促進薬であるAICARの投与効果を検討した。その結果、Compound-Cまたは、AICARの事前脳室内投与は、レプチンによる腎臓及び副腎交感神経促進作用を消失させた。現在、siRNA脳室内投与によるAMPキナーゼα2ノックダウンラットの作製に成功していることから、レプチン及びアディポネクチンによる自律神経及び摂食作用をこのノックダウンラットで検討している。また現在、研究代表者はマウスでの肝臓自律神経測定法を確立し、レプチン、アディポネクチン及びPACAPによる肝臓自律神経を調節する脳内分子メカニズムについて、阻害剤などを用いた検討している。
|