研究課題
RAGEは、多様なS100タンパク質に結合して各々に特異的な情報を細胞内に伝達する機能を持つと考えられているが、その作動機構は未だ不明である。今回我々は、RAGEシグナル伝達機構を解析し、RAGE細胞質領域に結合する候補タンパク質を新に同定した。このことはS100タンパク質群をリガンドとするRAGEの作動機構解明へ向けた大きな手がかりである。RAGE細胞質領域結合タンパク質の発現:HEK293細胞にRAGE細胞質領域を一過性に過剰発現させたところ、発現細胞において顕著なDNA合成の低下とアポトーシスが認められた。またこの発現は、リン酸化酵素Aktの活性阻害と転写因子NFkB、AP-1(炎症生サイトカインの誘導に必須)の活性阻害を引き起こした。これは、RAGE細胞質領域のみの過剰発現が、内因性RAGEに対してドミナントネガティブ効果を生み出していることを意味する。すなわち、RAGE細胞質領域からAkt、NFkB、AP-1の活性化をもたらすシグナルが確かに発せられているのである。RAGE細胞質領域結合タンパク質の解析:HEK293細胞に過剰発現させたRAGE細胞質領域を6Histag抗体共有結合担体によるプルダウンによって回収し、結合タンパク質を高感度質量分析計にて解析した。また同時に、結合の可能性のあるタンパク質群(我々の推測)に対する抗体を用いてウエスタンブロットを行った。その結果、二つの候補となる結合タンパク質を同定する事ができた。RAGE細胞質領域のリン酸化と候補結合タンパク質の結合:HEK293細胞にRAGE全長を一過性に過剰発現させ、S100A11、S100A12、HMGB1でそれぞれ刺激した。その後、細胞抽出液を調製し、免疫沈降によりRAGE全長を回収したところ、RAGEの細胞質領域が刺激に応じてリン酸化を受けることが判明した。RAGE細胞質領域がリン酸化修飾を受ける事で、結合タンパク質の結合能が上昇した。RAGE活性化状態のイメージングシステムの構築:細胞表面のRAGEにリガンドが結合するとルシフェラーゼ発光が誘導される細胞を作製する事に成功した。現在、本細胞を用いて、各リガンドに対する反応性を比較検討している。RAGEと各リガンドの結合:ビアコア機器を新たに立ち上げ、各リガンドとの相互作用について検討中である。機器の操作のマスターおよび結合の最適条件の決定等に時間がかかったことが理由である。RAGE以外のS100タンパク質受容体の探索:S100A11共有結合担体を用いることで現在、複数のS100A11結合性膜タンパク質を得ることに成功した。現在、他のS100タンパク質に関しても同様に行い、質量分析計にて受容体群の同定を行っている。
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