研究課題
本研究は、RAGE膜直下シグナル伝達機構の解明に、従来の分子細胞生物学的解析技術と我々独自の生体内RAGE分子の機能状態の動的可視化技術を融合することで、RAGEの作動機構を明らかにし、RAGEを標的とする治療法の開発やスクリーニングシステム開発の基盤にしようというものである。本年度における成果は以下の通りである。1:RAGE膜直下信号伝達機構:RAGEにリガンドが結合すると、膜直下細胞質領域の391SerがPKCζによりリン酸化を受ける。このリン酸化修飾が後の多彩な信号伝達に必須であり、TLR2とTLR4に共通のアダプタータンパク質であるTIRAPとMyD88をリクルートすることで下流に様々なシグナルを伝達できる(TRAMはリクルートされない)。その結果、NFκB活性化の誘導を介して様々な炎症性サイトカインが誘導される。本成果は、S100タンパク質群をリガンドとするRAGEの炎症憎悪への役割を理解するための大きな手がかりとなった。2:RAGE活性化状態のイメージングシステムの構築:HEK293細胞にRAGEイメージングベクター[RAGE(wt)-IRES-GFP-NFkBRE-Luc、および細胞質領域欠損型RAGE(Δcyt)-IRES-GFP-NFkBRE-Luc]を一過性に過剰発現させ、GAGEリガンド(S100A11、S100A12、HMGB1)でそれぞれ刺激した。その後、RAGEによるNFkB活性(Luc活性)を観察したところ、ワイルドタイプで顕著な活性化を動的に捉えることに成功した。また、Δcytでは、この活性化は検出されなかった。このことより、本実験系がRAGEの活性化検出法として有効であることが示された。3:RAGEと各リガンドの結合:ビアコア機器を立ち上げ、各リガンドとの相互作用について検討を行った。RAGE結合性S100タンパク質間における結合親和定数に大きな差異は認められなかった。4:RAGE以外のS100タンパク質受容体の探索:S100タンパク質共有結合担体を用いることで現在、複数の結合性膜タンパク質を得ることに成功している。現在、各膜タンパク質遺伝子のクローニングを行い、網羅的に相互作用の確認実験を行っている。
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