研究課題
本研究の目的は、アクチン結合分子Girdinと統合失調症原因因子DISC1の機能解析を通して生後、すなわち新生仔(児)期と成体期における神経新生の分子メカニズムと精神機能の分子病態を解明することである。さらにGirdinのファミリー分子の細胞生物学的解析を通して、生後の神経新生を制御するより普遍的な分子ネットワークおよび細胞内シグナル伝達機構を明らかにする。平成23年度は下記の点について明らかにした。(1)昨年度までにGirdin遺伝子の神経特異的遺伝子改変マウスを作成した。海馬歯状回および脳室下帯における組織学的解析を施行したところ、ノックアウトマウスと同様に新生ニューロンの著明な移動異常や位置異常が確認された。また生後3-4週間程で死亡することも明らかとなり、新生仔(児)期の海馬あるいは脳室下帯における神経新生が生存に必要であることも示唆された。(2)脳室下帯で産生される新生神経細胞の移動におけるGirdinとDISC1の意義を引き続き組織学的に解析し、論文を報告した。(3)Girdinのヘテロノックアウトマウス(Girdin+/-)において行動解析を施行したところ、海馬依存的な記憶の障害がみられることを明らかにした。一方、学習や新規対象認識試験では異常が観察されなかった。(4)統合失調症では介在ニューロンの異常が報告されている。生後10日目のGirdinノックアウトマウスにおいて介在ニューロンを各種マーカーの抗体を用いて染色したところ、パルブアルブミン陽性の介在ニューロンが著明に減少していることが明らかとなった(投稿準備中)。(5)Girdinのファミリー分子であるDapleの機能解析を行い、Wntシグナル依存的な低分子量Gタンパク質Racの活性を制御することを示した(論文投稿中)。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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