インフルエンザは、日本でも毎年冬になると決まって流行する病気として広く知られている。近年では、豚由来新型インフルエンザウイルスによる世界的大流行が起こり、その脅威に対して日本でもタミフルなどの備蓄に大変な金額が注がれている。しかし、既にタミフル耐性型のインフルエンザウイルスが発見されるなど、ウイルスの変異は頻繁に起こりうるため、このような新型ウイルスに対するワクチンや新薬の開発が世界中で積極的に行われている。本研究では、新規抗インフルエンザウイルス薬ターゲットとして、ウイルスの複製(増殖)に中心的な役割を担っているインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ(vRNAP)に注目し、このvRNAPの構造生物学的研究を行う。具体的には、vRNAPを精製・結晶化し、X線結晶構造解析によりその立体構造情報を得ることを目的とする。 vRNAPはPA、PB1とPB2の3つのサブユニットからなる250kDaと比較的大きな蛋白質であり、構造解析を行うのに十分な量を得るのは非常に困難である。本研究でも、その全ての構造解析を目指しつつも、薬剤ターゲットになりうる部位の部分的な構造解析を行ってきた。これまでに申請者は多くの部位のvRNAP発現系構築を試み、そのいくつかに成功した。本研究では特にサブユニット間結合に注目し、今回新たにPB2-PB1サブユニット結合部位の構造を明らかにした(Sugiyama et al. 2009)。今後は、これまでに明らかにしてきたvRNAPの部分的な構造を基にした新規薬剤候補を探索していくだけでなく、より詳細なvRNAPの反応メカニズムに迫るため、3つのサブユニットからなるvRNAP全体の立体構造解析に挑戦していく予定である。
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