低栄養が要介護の原因として重要な役割を果たしていることは知られている。しかしながら、どのような栄養素の不足がその後の要介護・死亡と関連しているかについての前向き研究の成果は、国内外を通じて少ない。そこで、本研究では、日本食パターンに関連する栄養素(イソフラボン・n3系不飽和脂肪酸)や葉酸、ビタミンB12などの栄養素について(1)要介護発生・死亡に関連する栄養素の同定を行った上で(2)その栄養素がどのような生活習慣と関連しているかの究明(3)その栄養素を考慮に入れた効率的なスクリーニング方法の開発(4)その栄養素不足に対する介入研究の立案を検討し、介護予防新技術の開発及び健康寿命の延伸につなげていくことを目的に研究を実施した。 血清イソフラボンのうちゲニステイン、グリシテイン、ダイゼインは均等4分割による4群、約半数が検出限界(0.9ng/mL)以下であったエクオールは検出限界以下群及び検出可能者を2分した3群を用いて分析した。その結果、ゲニステイン、グリシテイン、ダイゼインと要介護認定・死亡に統計学的に有意な関連は観察されなかったが、エクオールでは検出限界以下群に対して検出可能上位1/2群では要介護認定・死亡のオッズ比(95%信頼区間)が0.55(0.30-0.99)と有意に低かった。エクオールの産生能には個人差があることが知られており、エクオールを産生する能力の高い者で大豆摂取の介護予防効果が顕著である可能性がある。また、n3系不飽和脂肪酸、葉酸、ビタミンB12は要介護認定・死亡と明瞭な関連を示さなかった。
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