1、RAS/MAPK症候群の遺伝子解析 臨床症状からRAS/MAPK症候群が疑われる患者検体を収集し、既知の原因遺伝子であるPTPN11、HRAS、KRAS、BRAF、MEK1/2、SOS1、RAF1および最近新たに原因であると報告されたSHOC2、NRASの遺伝子解析を行った。これは、患者の臨床症状と遺伝子型の関連を明らかにする上で重要である。変異が同定されなかった検体は新たな原因遺伝子を持つ可能性があり、候補遺伝子の解析をすすめている。 2、変異蛋白による遺伝子発現への影響の包括的な検討 ヒト線維芽細胞に野生型HRASまたは活性型HRASを発現させ、アフィメトリクス社GeneChip[○!R] 3 IVT Express Kitを用いて遺伝子発現量を包括的に解析した。その結果、細胞外マトリックス、サイトカイン、ケモカインなどに関連する分子のRNA発現が特に大きく変化していることが判明した。このことは、コステロ症候群の臨床症状の成因を考える上で重要である。さらに詳細な検討を予定している。 3、Noonan症候群患者で同定されたRAF1変異のRAS/MAPK経路活性化メカニズムの検討 患者で同定されたRAF1S257L、N262K変異とRAF1の抑制分子である14-3-3遺伝子を培養細胞に導入し共発現させ検討したところ、RAF1と14-3-3の結合に重要なRAF1S259のリン酸化が低下しており、それにより14-3-3と分離しやすくなり下流のシグナルが活性化されることが示唆された。これはこれまで不明であった一部の変異の活性化機序を明らかにしたものであり、Human Mutation誌に報告した。
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