1、RAS/MAPK症候群の遺伝子解析 臨床症状からRAS/MAPK症候群が疑われる患者の検体を収集し、既知の原因遺伝子であるPTPN11、HRAS、KRAS、BRAF、MEK1/2、SOS1、RAF1、SHOC2、NRASの遺伝子解析を行った。これは、患者の臨床症状と遺伝子型の関連を明らかにする上で重要である。 2、コステロ症候群で同定されたHRAS変異体の機能解析 コステロ症候群で同定されたHRAS変異体9種類をNIH3T3細胞に一過性に導入しRASシグナル下流の転写活性を調べたところ、Lys117Arg、Ala146Val変異ではGly12Ser等と比べ転写活性の上昇は軽度であった。これらの結果から、Lys117ArgおよびAla146Valを持つコステロ症候群患者の臨床症状が典型例に比べやや軽度であるのは、変異体のシグナル伝達経路下流への影響が弱いためである可能性が示唆された。この所見により、遺伝子変異と患者表現型の関連を機能的に説明できる可能性がある。また、HRAS変異体9種類を、レトロウイルスベクターを用いヒト線維芽細胞に安定的に過剰に発現させた場合、いずれの変異体を発現させた細胞においても細胞の大きさが大型となる形態的特徴を示し、細胞内分子の解析では細胞周期を阻害する分子の発現上昇が見られた。この所見は、コステロ症候群における成長障害のメカニズムの一つである可能性があり、重要である。これらの研究内容をまとめ論文投稿中である。
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