マウス、ヒト悪性黒色腫のインテグリンαvβ3とそのリガンド発現をFlow cytometry、定量的PCR法にて検討した。興味深いことに、95%の悪性黒色腫はインテグリンαv、およびMFG-E8発現を認めていた。In vitroでの腫瘍生物学的特性に与える検討を、腫瘍細胞へのsiKNA導入、阻害抗体投与にて検討した。MFG-E8、インテグリンαvは腫瘍増殖能に対して関与を認めなかったが、一部の腫瘍細胞では抗癌剤に対する抵抗性に強く寄与していることを発見した。さらに、腫瘍細胞のプロフィールを詳細に検討すると、抗癌講不応にある進行期で得られた腫瘍細胞、特にCD133、ABCB陽性分画でSTICなど抗癌剤、MEK1-kinase阻害剤などの分子標的剤に対する治療抵抗性に大きく寄与していた。CD133やABCB5は悪性黒色腫において癌幹細胞に特異的に発現するマーカーであると報告されている背景より、インテグリンαvβ3が悪性黒色腫の幹細胞形質を修飾し、抗腫瘍剤に対する治療感受性を負に調節する可能性が考えられた。さらにin vivoによる検討で、インテグリンαvβ3およびMFG-E8阻害抗体により、DTIC、分子標的剤による治療反応を優位に換算することが可能であった。以上の検討より、インテグリンαvβ3が腫瘍幹細胞形質、機能に及ぼす分子メカニズムについて、現在解析を進めているところである。
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