研究概要 |
本研究課題では、表皮唯一の樹状細胞であるランゲルハンス細胞の前駆細胞を同定し(pre-LC)、毛嚢がこれらの細胞を動員する免疫機能を有することを明らかにした。毛嚢の免疫機能を明らかにしたのは本研究が初めてである。骨髄移植の系を駆使し、pre-LCがMLysozymeでfate mapしうる細胞であることを突き止め、これらの細胞は炎症に反応して表皮に動員されることが分かった。以前骨髄のGr-1high CD115high細胞がランゲルハンス細胞の起源として報告されたが、我々が同定した pre-LCはこの細胞に由来することが分かった。Pre-LCは表皮に動員される際、ケモカインレセプターであるCCR2とCCR6を必要とし、CCR8を欠損するとランゲルハンス細胞の数がむしろ増加した。CAG-GFPマウスの骨髄をランゲルハンス細胞欠損マウスに骨髄移植し、テープストリップ刺激を受けた耳にGFP陽性の白血球が浸潤する様子を2光子顕微鏡で観察すると、pre-LCを含む骨髄系細胞は1時間以内に劇的に毛嚢に集積した。これは、毛嚢が骨髄系細胞を動員するメカニズムを有していることが強く示唆された。我々が発見した毛嚢マーカーであるEpCAMと既存のマーカーを利用し、毛嚢と表皮細胞を5サブセットに分離したところ、pre-LCの動員に必要なケモカインが異なる場所で発現していることが分かった。進行性に脱毛を来すTACE cKOマウス皮膚を利用し、pre-LCの復帰のためには毛嚢が必須であることを証明した。また、ヒト毛嚢内でもケモカインの発現は分担されており、ランゲルハンス細胞の維持には毛嚢が必須であることを示した。これらは現在投稿中である。また、本研究のためにTACEcKOを解析したが、これも独立した研究論文として投稿中である。本研究の流れで、ランゲルハンス細胞の液性免疫の機能を解析し、ランゲルハンス細胞は表皮タイトジャンクションの間から樹状突起を伸ばして細菌抗原を獲得し、液性免疫を誘導することを証明した。 この免疫応答は実験的ブドウ球菌性熱傷様皮膚剥脱症を予防した(Ouchi et al. JEM, 2011)。
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