研究概要 |
本研究では、フォスファチジルセリン含有した細胞サイズのリポソームによって、アポトーシスに陥った細胞を模倣することで、組織の炎症反応を制御する。人工合成が可能なリポソームであれば、安価且つ容易に、そして拒絶反応の影響なく炎症を抑えことができる。さらに、リポソーム内に心筋組織修復・再生を促すようなタンパク質や遺伝子等を内包することで、炎症を制御しながら組織の修復・再生を実現するような、新規の心筋再生治療用キャリアを開発し、細胞を用いない心筋再生医療を実現することを目的とした。昨年度までは細胞サイズのリポソームを作製できる条件を検討し、作製したリポソームの、肺胞マクロファージに対する炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6,IL-1β)及び抗炎症性サイトカイン(IL-10,TGF-β)発現について検討を行なった。本年度は、心筋梗塞モデルラットおよび心筋炎モデルラットに対する抗炎症効果と心機能増悪抑制効果について検討を行なった。両モデルにリポソームを移植した群の組織学的観察では、炎症性サイトカインの発現抑制と抗炎症性サイトカインの発現増強効果が確認された。さらに、移植後4週の心臓超音波検査で心機能増悪の抑制効果が認められた。今後、リポソームに封入する薬剤、成長因子等について、候補因子の探索とその機能発現について検討を重ね、炎症を制御しながら組織の修復・再生を実現するような心筋再生治療用キャリアの開発を目指す。
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