研究概要 |
【目的】悪性脳腫瘍であるグリオーマに対する治療後の再発原因は放射線化学療法に抵抗性を示すグリオーマ幹細胞と考えられている。グリオーマ幹細胞の浸潤能は高いとされるがその分子メカニズムについては知られていない。今回我々はグリオーマ細胞株および手術検体から幹細胞様グリオーマ細胞を分離し、浸潤関連分子の発現をスクリーニングし候補分子の浸潤への関与を検討した。 【方法】磁気細胞分離法により腫瘍幹細胞マーカーであるCD133を発現する細胞集団とCD133陰性細胞を4種類のグリオーマ細胞株(U87, U251, T98G、SNB19)から分離した。またneurosphere法により手術検体から幹細胞様グリオーマ細胞濃縮集団を得た。これらの細胞の細胞外マトリックスへの接着能を観察し、グリオーマ浸潤関連遺伝子の発現を定量的RT-PCRによりスクリーニングした。グリオーマ細胞株における候補遺伝子の発現を調べ、そのノックアウトおよび強制発現によるグリオーマ細胞株の遊走浸潤能の変化を観察した。 【結果】幹細胞様グリオーマ細胞濃縮集団はfibronectinおよびlamininをコートしたディッシュ上で接着したことから接着分子integrinファミリーに着目した。その中でintegrin α3が幹細胞様グリオーマ細胞において有意に高発現していた。integrin α3はグリオーマ組織において浸潤腫瘍細胞に局在し、またグリオーマ幹細胞のニッチと考えられる血管周囲の腫瘍細胞に強く発現していた。Integrin α3の高発現株であるU87とSNB19においてintegrin α3をノックダウンすると浸潤能は低下し、低発現細胞株であるU251に強制発現すると浸潤能は亢進した。 【結論】グリオーマ幹細胞の浸潤能にintegrin α3が関与していることが示唆された。
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