加齢による骨代謝恒常性の破綻に起因する代表的な疾患として、骨粗鬆症が挙げられる。骨粗鬆症の制御のためには、骨破壊性細胞である破骨細胞と、骨形成系細胞である骨芽細胞の、両面からの制御が欠かせない。本研究では、破骨細胞の分化や機能を発揮する上で特徴的な分子であるNFATc1(破骨細胞分化に必須の転写因子)、DC-STAMP(破骨細胞の細胞融合に必須の分子)ならびにCathepin K(破骨細胞に特徴的な蛋白分解酵素)の発現が、転写抑制因子であるBc16によって直接負に制御されること、また、このBc16の発現は破骨細胞分化の誘導因子であるRANKLの刺激によって発現が誘導される、やはり転写抑制因子であるBlimp1によって直接負に制御されることを見出した。つまり、RANKLの刺激により誘導されるBlimp1が、未刺激状態で発現し破骨細胞に特徴的な遺伝子群の発現を抑制しているBc16の発現を抑制することでその抑制を解除し、破骨細胞分化が進行することを明らかにすることが出来た。この破骨細胞の分化や機能発現に関する機構は、これまで明らかにされてきたカルシウムシグナルやITAMシグナルによる分化機構とは異なる、新たな機構であった。また、Bc16欠損マウスでは破骨細胞の分化亢進と骨量減少が、また逆に破骨細胞特異的Blimp1欠損マウスでは破骨細胞の分化抑制と骨量増加を認めることから、今回見出された機構が破骨細胞制御から骨の恒常性を制御していることを明らかにした。さらに、Bc16は骨形成系にも機能していることを見出しており、Bc16が破骨細胞と骨芽細胞、両面から骨恒常性を制御していると考えられる。
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