平成21年度の研究計画は、強化インスリン療法時、通常血糖管理時に持続血糖測定を行い血糖のばらつきがどれほど生じているか検討し、患者予後、ケミカルメディエーターとの関連を検討することであった。2009年3月に報告されたNICE-SUGAR trialによって、強化インスリン療法の有害性が指摘され、国際的敗血症治療ガイドラインにおける血糖管理の推奨が改訂されたため、本年度は、通常血糖管理における血糖のばらつきと患者予後、ケミカルメディエーターとの関係を検討した。 研究1;心臓手術患者における人工心肺中の血糖変動と術度腎不全および酸化ストレスとの関連の検討。16名の心臓手術患者において術中~術後まで持続血糖測定を施行し、人工心肺中の血糖変動と術後腎機能障害の程度、酸化ストレスの程度との関連を検討した。血糖変動は、他の汎用される血糖の指標である平均血糖・最高血糖・最低血糖と比較して同等あるいはより強く両者と関連した。本研究結果は国内・国外学会で発表し、第56回日本麻酔科学会最優秀演題を受賞した。現在、国際雑誌投稿に向けて執筆中である。 研究2;食道術後患者の血糖変動と術後ケミカルメディエーターの推移 19名の食道術後患者において、6時間毎に血糖測定を10日間行い、長期的血糖変動と患者予後およびメディエーターとの関連を検討した。持続血糖測定は48-72時間の使用が限界であるため、この研究では使用していないが、将来持続血糖測定が長期間使用できるようになった際に重要なパイロットデータとなりうる。20名まで集積した時点で解析を行う予定である。
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