マウスの心臓を摘出後、ランゲンドルフ法にて灌流、コラゲナーゼにより細胞間結合を解き、マウスの単一心筋細胞を取得した。この単一心筋細胞を用いて、siRNAを使用しカベオリン-3のノックダウン細胞を作成した。この細胞をPCR法およびイムノブロット法を用いノックダウンされていることを確認した後、低酸素in vitro実験を行った。 通常の遊離心室筋細胞を用いた低酸素in vitro実験においてはポストコンディショニング作用(オピオイドならびに吸入麻酔薬によるポストコンディショニング)によって心室筋細胞の生存率が上昇したが、ノックダウン細胞においてはこの心筋保護作用が棄却されたことから、オピオイドならびに吸入麻酔薬によって誘起されるポストコンディショニング心保護効果にカベオリン-3が重要な役割を演じていることが推測された。 また、コレステロール枯渇剤を前投与してカベオラの崩壊をもたらした場合、これらのポストコンディショニング心保護作用が棄却されることから、カベオラの構造もカベオリン同様この作用発現に重要であることが推測された。 さらに、上記の実験をカベオリン-3ノックアウトマウスから取得した単一心筋細胞においても行なった結果、カベオリン-3をノックダウンした場合と同様の結果を得ることができた。 マウスに虚血-再還流(30分-2時間)を行うin vivo実験においては、ポストコンディショニング刺激(オピオイド、吸入麻酔薬)を加えた場合、心筋梗塞サイズは対照群と比較して有意に減少し、ポストコンディショニングによる心筋保護作用が明らかとなったが、これらの作用はカベオリン-3ノックアウトマウスにおいては観察することはできなかった。
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