本研究では、がん免疫療法(WT1ペプチドワクチン療法)を施行中の患者において、悪液質にも関与する一方、ワクチン療法におけるエフェクター細胞である細胞障害性T細胞の活性化に不可欠なマクロファージ系細胞の再賦活化を目的とした新規アジュバントを探索し、癌ワクチン療法の治療効果向上を図ることを目的とする。本年度は以下のような結果が得られた。 1. 末梢血中樹状細胞数の動態 これまでに、WT1ペプチドワクチン療法(ペプチド単独)を行った患者の中で、末梢血中のミエロイド系樹状細胞の測定が全てのポイントにおいて実施された者が6名いた。この6名のうち病状安定(SD)群(2名)と病状進行(PD)群(4名)との間で、ミエロイド系樹状細胞比率の平均値を比較したところ、統計学的有意差を持ってSD群において高値であった(p=0.0374)(現在論文投稿準備中)。このことから、WT1ペプチドワクチン療法の臨床効果の予測因子として、末梢血中のミエロイド系樹状細胞の数が関与している可能性が強く示唆された。 2. WT1ペプチドワクチン療法における新規アジュバントの探索 WT1ペプチドワクチン療法の臨床効果を高めるためには、患者の骨髄機能、特に細胞傷害性Tリンパ球の誘導に不可欠なミエロイド系樹状細胞の質的・量的改善が必要であることが推測される。そこで、今回得られた結果を踏まえミエロイド系樹状細胞を活性化するアジュバントとして、GM-CSF、CpGを併用したWT1ペプチドワクチン療法を、今年度、新たに計画し倫理委員会の承認を受け実施している。2010年3月末までにペプチド単独群(コントロール群)5名、GM-CSF群2名がエントリーされた。
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