本研究では、癌患者において悪液質にも関与する一方、ワクチン療法等の免疫療法におけるエフェクター細胞である細胞障害性T細胞の活性化に不可欠なマクロファージ系細胞の再賦活化を目的とした新規アジュバントを探索し、癌ワクチン療法の治療効果向上を図ることを目的とする。本年度はWT1[Wilms'tumor gene:腎芽腫(Wilms腫瘍)の関連遺伝子として単離]を癌抗原としたWT1ペプチドワクチン療法を臨床試験として実施し以下のような結果が得られた。 【臨床試験概要(2009年9月東京女子医科大学倫理委員会承認)】 投与ペプチド:HLA-A*2402もしくはHLA-A*0201/*0206拘束性のWTIペプチド(3mg/body) エマルジョン合成試薬:Montanide ISA 51(不完全アジュバント)、免疫増強アジュバント:GM-CSF(100μg)もしくはCpG-ODN(100μg)、投与方法:ペプチド単独投与群、GM-CSF併用投与群、CpG併用投与群それぞれ1週間に1回8週間連続投与、主要評価項目:NCI-CTCAE v.3.0に準じた安全性の評価、副次評価項目:RECIST基準に準じた有効性の評価 【研究成果:エントリー患者:28名(平均年齢:58.8歳)】 ペプチド単独投与群:10例(完遂例:4例)RECIST基準による判定;SD 2例、PD 8例 GM-CSF併用投与群:8例(完遂例:6例)RECIST基準による判定;SD2例、PD6例 CpG併用投与群:10例(完遂例:9例)RECIST基準による判定;SD6例、PD4例 全ての群において当該ペプチドワクチン療法による副作用は、ワクチン注射部位における皮膚の発赤・腫脹・掻痒以外は確認されなかった。以上の結果よりGM-CSFおよびCpGは安全に併用可能な免疫増強アジュバントであることが確認された。
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