研究概要 |
EMTは癌の浸潤、転移に関与しており、snail, twistなどの転写因子がEMTに重要な働きをしている。卵巣癌におけるEMTが抗腫瘍薬、放射線感受性、低酸素耐性、及び低栄養状態などのオンコジェニックストレス(Oncogenic stress)抵抗性に対していかに影響を及ぼすか?という本科学研究費課題に対して本年度計画で述べた1),EMT誘導因子,TWISTの発現が抗腫瘍薬感受性や放射線感受性に与える影響2)EMT誘導因子をターゲットとした抗癌剤自然耐性/放射線抵抗性-卵巣癌細胞における分子標的治療に関する基礎的研究に対して以下の新規治験を得た。 初年度はまずEMTという現象をより深く認識し、in vitro実験モデルを構築するため、卵巣癌の転移形成に関与する新たなEMT誘導転写因子同定に関する基礎研究を行った。すなわち、OncomineというDNAアレイのデータベースを用いて卵巣癌で発現が上昇している転写因子を探索した。そして癌で発現が亢進している転写因子48個に対するsiRNAを購入し、ES-2という卵巣癌由来の細胞に導入し、その形態変化を観察した。ES-2細胞は線維芽細胞様の形態であるが、ZNF91, ZNF142, ZNF154などの遺伝子に対するsiRNAを導入することで、EMTが誘導され、上皮様の形態へと変化した。また、ALX1, TRIM29, PLAGL2, HOXB7など遺伝子に対するs1RNAの導入により、細胞骨格の形成が促進され、細胞の浸潤が顕著に抑制されることが明らかとなった。次いで、EMT誘導因子の発現が様々な抗腫瘍薬に対する感受性や放射線感受性に与える直接的影響を調べるため、TWIST1プラスミドをGFP融合レトロウイルスベクターPQCXIPに対して遺伝子導入し、NOS-2細胞におけるTWIST1過剰発現株を樹立するのに成功した。遺伝子導入の確認はGFPの発色によって確認し、polyclonalな細胞集団を獲得した。現在、これらのマテリアルを使用し、薬剤耐性および放射線耐性のメカニズムを解明する予定である。
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