研究概要 |
1.NETs免疫システムを阻害するA群レンサ球菌の病原因子の検索 平成21年度に至適化を進めた「リアルタイムの自然免疫観察モデル」を用いて,NETs発現過程を阻害するレンサ球菌の病原顕子のモニタリングとスクリーニングを行った.その結果,少なくともレンサ球菌のenolaseがNETs形成を誘導することを明らかにした.その他のNETs誘導因子については,次年度に申請する基盤研究で発展的に検索する計画である.次に,発現したNETs構造体を分解するA群レンサ球菌の病原因子の検索を行った.A群レンサ球菌の各種組換えタンパクをNETsに作用させ,分解作用を呈するタンパクをスクリーニングした結果,SpeBプロテアーゼを同定した. 2.免疫システムを阻害するA群レンサ球菌の病原因子の一分子解析 本年度計画の2項目目として,前年度に至適化した原子間力顕微鏡の撮影方法を用いて,培養細胞や活性型タンパク,さらには生菌等の湿潤試料をナノスケールで観察した.さらに,1秒間に10コマ以上の撮影能力を有するスキャナー増設し,A群レンサ球菌の病原因子が,好中球細胞表層の分子やNETsに結合あるいは分解反応を起こす過程を一分子ごとにリアルタイム画像で追跡し,超微細形態学的に解析した,この実験系により,A群レンサ球菌の新たな免疫回避分子を同定することができた(補体C6結合タンパク). 3.結論 以上の申請研究により,電子顕微鏡によるナノスケール解析や,タイムラプス蛍光顕微鏡を利用した経時的な感染現象の解析,あるいは共焦点レーザー顕微鏡を用いて三次元空間内での感染と免疫のせめぎ合いを観察することで,感染症研究に時空間的な検索を展開する基盤を確立できたと考える.
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