これまでの次世代シークエンサーを用いた解析により、マウス皮膚創傷治癒過程において発現誘導される300種類以上の既知microRNA(miRNA)及び約180種類の新規miRNA候補を同定した。 さらに、炎症期に有意に発現誘導される7種類の炎症反応特異的miRNA(IR-miRNA)を抽出した。 そこで本年度は、炎症反応が惹起されないPU.1遺伝子欠損(KO)マウスを用いて、詳細に検証を行った。その結果、抽出されたIR-miRNAは、PU.1 KO及びヘテロ(ht)マウス皮膚創傷部位では、コントロールマウスに比べ、有意に発現が減弱していることが明らかとなった。 また、in situ hybridization法により、IR-miRNAは、炎症細胞(好中球・マクロファージ)において発現が認められた。 また、IR-miRNAの標的遺伝子の同定を目的とし、DNAアレイ解析を行・った。 その結果、IR-miRNA群は、主要な炎症性サイトカイン・ケモカイン類の発現抑制に関与していることが明らかとなった。 さらに、アンチセンスオリゴ(ASODN)を用いて、マウス皮膚創傷部特異的にIR-miRNA発現抑制を行い、治癒の肉眼的解析を試みた。その結果、IR-miRNAの発現抑制を施した創傷部位では、炎症の収束遅延が原因であると推察される、治癒遅延が観察された。 従って、同定されたIR-miRNAは、皮膚創傷治癒部位における炎症制御に重要な役割を果たしていると推察される。 今後は、in vivo解析を主体として、これらIR-miRNAの機能解析を詳細に行う予定である。
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