研究概要 |
これまで心腔内投与癌骨転移モデルを用い,FAK(focal adhesion kinase)397番目のチロシン残基を選択的に阻害する新規分子標的治療薬TAE226投与を行うと,コントロール群では腫瘍に隣接する骨面上に破骨細胞様の多核の巨細胞が著明に観察されたが,TAE226投与群では腫瘍と隣接する骨面での単位距離あたりの破骨細胞数が有意に減少することを明らかとしてきた。このメカニズムをより詳細に検討するため,FAKの破骨細胞の機能に関して検討をおこなった。破骨細胞前駆細胞としてRAW264.7細胞とI型コラーゲンとの接着能はFAK阻害により有意に低下し,同様にオステオポンチンとRAW264.7細胞との結合も同様に減少することが明らかとなった。RANKLによって誘導されたRAW264.1細胞の破骨細胞分化能,骨吸収能ともにFAK阻害により有意に抑制され,アクチンリングの崩壊を認めることが明らかとなった。血清によって誘導されたERK,p38MAPK,IkB alphaのリン酸化はTAE226処理により抑制され,RANKLによって誘導されたNFATc1,Cathepsin K,TRAP発現はTAE226処理により抑制された。さらに,PTHrPを用いた高カルシウム血症マウスにおいて,TAE226投与群では血中カルシウム濃度が有意に低下した。また,高カルシウム血症によって誘導されたマウス体重減少がTAE226投与により,体重が回復することが明らかとなった。これらの結果より癌骨転移巣における腫瘍増大は,破骨細胞接着,分化,吸収にかかわるFAKシグナルが多いに関与することが示唆された。
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