研究概要 |
これまで志茂等はFocal adhesion kinase(FAK)397番目のチロシン残基を選択的に阻害すると,転移性癌骨破壊が抑制することを新規分子標的治療薬TAE226を用いて明らかにしてきた(Experimental Cell Research 2011)。さらに,このメカニズムを口腔癌で詳細に検討を行った。当科における口腔扁平上皮癌切除標本を用いた,FAK Tyr397の発現は癌浸潤部で発現を認めると同時に,癌新生血管に高発現を認めることが明らかとなった。口腔扁平上皮癌マウス移植モデルにFAK Tyr397を選択的に阻害すると,腫瘍増大と同時に癌新生血管が著しく抑制されることが明らかとなった。このメカニズムを明らかとするため,口腔扁平上皮癌細胞におけるFAK Tyr397選択的に阻害すると,口腔扁平上皮癌の増殖能,遊走能,接着能,浸潤能が有意に抑制されると同時に,AKT,ERK,caspase-3経路でアポトーシスを誘導することが明らかとなった。さらに,破骨細胞分化,活性に重要な骨芽細胞におけるFAKを抑制すると,増殖能のみならず,遊走能,分化能を抑制することが明らかとなった。これらのことより口腔癌骨浸潤においてFAK Tyr397のリン酸化は口腔癌のみならず,腫瘍血管の誘導,骨吸収をサポートする骨芽細胞の生存,増殖,分化に重要な役割をもち,口腔癌顎骨破壊病変の標的となる可能性が示唆された。
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