本研究の目的は歯周組織及び顎顔面骨格系に存在する組織特異的幹細胞のin vivoにおける同定とその性質の解析である。1)pulse-chase法を用いた長期ラベル保持能を有する組織特異的幹細胞の同定、2)Cre-ERTシステムを用いた早期骨格系細胞の分化運命追跡の2つの方法に着目した。1 当初想定した核酸アナログBrdUを用いたpulse-chase法では長期ラベル保持細胞の事前回収が不可能であり、その解析において著しい制約を伴う。そのためテトラサイクリン系薬剤でヒストン結合GFPの発現制御(Tet-Onシステム)が可能なノックインマウス(Rosa26-M2rtTA ; Collal-TRE-H2B-GFP)の譲渡を受け、遺伝子発現および細胞レベルの解析を行う。ノックインマウスに胎生14日から生後7日目まで薬剤を投与した結果、骨格系を含む大部分の組織の細胞核がGFPによりラベルされた。薬剤投与中止後2週間経過後においてGFPラベルは一部の細胞のみに保持されることが確認された。2)早期骨格系細胞の分化に関与する転写因子としてMsx2およびRunx2に着目し、これらを発現する細胞の分化運命をCreERTシステムにより追跡する。Runx2-CreERTおよびMsx2-CreERTコンストラクトはBacterial Artificial Chromosome(BAC)を用いたrecombineeringにより作成した。Runx2-CreERTおよびMsx2-CreERTトランスジェニックマウスを現在作成中である。これらのノックインマウスおよびトランスジェニックマウスを用いた複合的なアプローチにより、骨格系に存在するさまざま段階の幹細胞とその分化運命の決定機序を解明する。
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