研究課題
中間径フィラメントnestinは神経系幹細胞および神経堤細胞の標識分子であるが、近年間葉系幹細胞においても同様に発現することが報告されている。また我々はこれまで、浮遊培養系においてスフィア形成能を持つ歯根膜細胞がnestinを発現することを明らかにしている。今年度は骨原基初期発生におけるnestin陽性細胞の関与を検討するために、inducible Cre-LoxPシステムおよびGFP、tdTomatoレポーターシステムを組み合わせたトランスジェニックマウス系を用いた実験を行った。胎生10日肢芽においてnestin陽性細胞は栂指原基側および中央部に網状に幅広く存在し、網状細胞はCD31を共発現していた。胎生12日においてnestin陽性細胞は軟骨原基内部には存在せず、それを取り囲む軟骨膜に多数認められた。胎生14日中央部軟骨膜においてnestin陽性細胞層は重層し、CD31あるいはosterixを共発現する群、または単発現するものなどの異質化が認められた。胎生14日に軟骨膜においてosterixを発現した細胞は、軟骨原基に侵入し骨芽細胞および骨細胞へと分化し一次骨化中心を形成し、出生時までは自己複製を行いほぼ全ての骨芽細胞系に寄与したが、その後急激に消退し生後21日においては骨幹部の骨細胞を除いて完全に消失した。生後8日骨端部においてnestin陽性細胞は成長板軟骨直下一次海綿骨領域に限局し、多数がCD31を共発現していた。生後8日においてnestinを発現した細胞は、14日後あるいは35日後においてはごく一部が骨芽細胞および骨細胞へと分化したものの、大半はCD31陽性血管内皮細胞および骨髄間質細胞へと分化した。以上の知見よりnestin陽性細胞はosterixを発現する骨芽細胞系前駆細胞とは明らかに異質な細胞集団である事が示唆され、骨原基初期発生と成熟骨髄環境におけるnestin陽性細胞の性質は異なることが推察される。
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American Journal of Pathology
巻: 180 ページ: 811-818
DOI:10.1016/j.ajpath.2011.10.028
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