研究課題
歯周組織再生部位において、微小環境に存在する様々なサイトカイン刺激が、どのような分子機構により未分化間葉系幹細胞を増殖から分化へのスイッチの切り替えを誘導するのか、欠損部位の組織修復にとる重要な基質産生や細胞遊走を惹起するシグナル系へと統合されるかは未だ不明である。H22年度の研究計画を継続し、サイトカインシグナル伝達蛋白質の量や質の修飾機構が歯根膜幹細胞の石灰化や基質産生といった生理機能を実際にどのように制御しているのかについて分子レベルで解析をおこなった。歯根膜細胞のin vitro長期石灰化培養においてTGF-β1型受容体阻害剤処理がBMP2刺激により誘導される石灰化物形成を著しく増強することを見いだした。また、添加時期を変えることにより、歯根膜細胞の産生する内在性のTGF-βはBMP2刺激により誘導される硬組織形成細胞へのコミットメントを抑制していることを見いだした。興味深いことに、TGF-βは成熟した硬組織形成細胞からのCollagen等の基質産生は増強していた。これは、TGF-βが歯根膜細胞の分化期や成熟期といった時期に応じて異なる生理機能を有することを示唆する。DNAアレイによる全遺伝子網羅解析による分子レベルでの検討により、E3ユビキチンリガーゼであるSmurflとSki,Smad7が歯根膜細胞の硬組織形成細胞への分化にとり重要であることを明らかにした。現在、代表的な増殖因子であるFGF2と間葉系幹細胞をビーグル犬歯槽骨欠損モデルに移植しその組織再生誘導能を検討中である。組織再生の中心となる歯周組織幹細胞に対して、歯周組織の創傷治癒や再生に関わるサイトカイン群を作用させた際に繰り広げられる細胞内シグナルのクロストーク機構の解明は、効率的な増殖、分化を惹起するためのスーパーサイトカイン療法開発につながる重要な分子基盤情報となるものである。
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