本研究の目的は、申請者が過去に開発した「施設家族介護負担感尺度」を活用して、高齢者施設・住宅の入居者に介護を行っている家族を支援するプログラムを開発することである。 平成22年度の活動は以下の通りである。まず、平成21年度に実施した全国調査の結果を対象となった2000施設へ報告し、一部の施設からはその報告内容についてのフィードバックを得た。また、この調査の結果を平成22年11月に米国ルイジアナ州ニューオリンズ市にて行われた第65回アメリカ老年学会(The Gerontological Society of America)にて"Complaints to Japanese Nursing Home Administrators and Staff from Family Members of Residents"として発表し、高齢者施設の入居者の家族からの苦情や要望にうまく対処し、ケアの質の向上につなげていくための方策について参加者とディスカッションを行った。さらに、東京都内の特別養護老人ホームの施設長と面談し「施設家族介護負担感尺度」実践活用に関して情報収集および協議を行った。プログラム開発に向けた海外視察として、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア市ペンシルバニア大学を訪問し、同大学が経営・運営する高齢者へのサービスプログラムであるLIFEにおいて高齢者の家族への支援および上級看護実践者の役割について情報収集を行った。また、高齢者の終末期ケアに携わる看護職・医療福祉職を対象とした教育プログラムであるELNEC-Gの講習会に参加し、高齢者およびその家族への終末期ケアについての示唆を得た。さらに、ペンシルバニア大学にて高齢者終末期ケアを専門とする研究者と今後の共同研究の実施についての合意を得た。上記の活動および収集した情報から今後、わが国の高齢者施設の家族支援プログラムの開発を進めていく予定である。
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