研究概要 |
本年度は,対称関数の中でも特に「剰余関数」に着目し,剰余関数を計算するパルス発生量及び素子数が共に小さいしきい値回路の設計及び解析を行った.その結果,素子数を多く用いることによりパルス発生量を小さく抑えることができる一方で,逆にパルス発生量を大きくすることにより素子数を小さく抑えることのできる,新しい回路の設計手法を与えることに成功した.この設計手法において,パルス発生量と素子数の内,どちらか一方の値は回路設計者が自由に決定することができる.剰余関数を計算するしきい値回路のパルス発生量と素子数の間にはトレードオフの関係があること(即ち,パルス発生量と素子数が共に極端に小さいしきい値回路は存在しないこと)は,我々が理論的に厳密に証明しているが,上記の設計手法によって得られるしきい値回路のパルス発生量と素子数はこのトレードオフにほぼ一致する.よって,我々の設計手法はパルス発生量と素子数の両面で,理論的にほぼ最適な回路を与えることができると言える.さらにこの結果は,我々の導出したパルス発生量と素子数の間のトレードオフが,剰余関数を計算するしきい値回路に関してはほぼ厳密に成立することも示している.設計手法の中で回路を構成する素子の個数や素子間の接続関係など,その回路構造の詳細が明示的に記述されたことにより,剰余関数を計算するしきい値回路について,パルス発生量と素子数を小さく抑えるためにどのような回路構造が有効であるかが明らかになった.
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