「ゲーム理論」において、将棋や囲碁などの組合せ論的二人ゲームの盤面を計算理論的に抽象・一般化し、ゲームの進行を「ある種の計算機」と見なした計算モデルが交替性計算である。このモデルは、計算量理論においては比較的古典的なものであるが、計算構造が他のモデルと比較すると極めて複雑であり、その本質的な計算能力について未解決問題が多い。 本研究の課題は、この交替性計算モデルの概念をより明確にするために、既存の計算モデルである決定性・非決定性・確率的計算モデルそれぞれを比較し、従来の計算量理論の手法や新しい技法を適用することで、各計算モデルで定義される計算量(すなわち、計算に必要な時間とメモリ領域)の各クラス間の未知なる関係性を明らかにすることである。特に、交替性計算が決定性計算を別の側面で特徴付けるだけでなく、本質的に計算手法が異なるという示唆に基づき、未解決問題である「非決定性計算量・乱択計算量の交替性計算による非自明な特徴付け」に関する研究、並びに、双対的という意味において交替性計算と類似性がある計算量クラス NP∩co-NP の帰納的可算性に着目した研究を行った。 加えて、計算量・アルゴリズム理論の応用的側面を考察した。そして、与えられたオブジェクト指向ソフトウェアが「ある種の複雑ネットワークを持つ」性質に着目し、ソフトウェア構造を再構成することで、ソフトウェアへの機能追加し易い構造(良構造)へ変形するアルゴリズムについて考案し、当該研究に関する論文を学術論文誌へ投稿した。
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